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ざっくばらん手記「ばんびじゃーなる」

大罪

記憶違いでなければ、今日は元彼(と一緒に飼っていたと少しは言ってもいいと思う)の犬の命日だ。だったと思う。

わたしはあの日、酔っていた。

目を瞑ると多少目の裏がくるくるする酔い具合で、すでにベッドの横になっていた。

その時が“12日”の日付を越えていたのか、越えていなかったのかどうかを覚えていない。

 

起こされて事態を知ると、急に酔いが収まった気がした。

何よりわたしよりも彼が気が動転していたからだ。

とにかくなだめるために一方的に話しかけ続け、言葉を掛け続けた覚えがある。

その日は寝室のベッドではなく、二人で確かリビングで眠った。

わたしも途切れ途切れの睡眠だったが、彼の方はそれを上回る眠れなさで、生気がないというかなんというか、そういう感じだった。

 

その翌日だったか、翌々日だったか、火葬屋に来てもらい、引き取ってもらうことになった。

割と暑い晴れた日だったのに、上下真っ黒なスーツに真っ白なシャツ、真っ黒なネクタイの男性が来たから非現実的だなぁとちょっと驚く。

汗をたっぷりかいたその男性が玄関先で犬の遺体をお棺に入れ、その後言葉を掛ける時間をくれた。

その時に、わたしは初めて遺体を見た。

家に置いている間は怖くて見られなかったから。

寝てるみたいだねぇ、かわいいねぇ。とかナントカ言ったと思う。

それまで1ミリも出てこなかった涙が急に出てきて、鼻水ずるずるで話し掛けた。

彼はあまり話さなかったかな、泣いてた気がする。

あんまり覚えていない。

犬は本当に眠っているみたいなお顔で、お花に囲まれて、た、かな、それすらちょっと記憶がおぼろだけど、でもとにかく眠っているみたいなきれいなお顔だったのを忘れない。

 

遺体を乗せた車が走り出し、見えなくなるまで見送る。

じりじりと暑い日で、私たちは半分パジャマみたいな部屋着だった。

犬の死後彼が死んだも同然になり、それに付き添ってたから前の日から着替えてすらなかったから。

外に出たのは車を見送った時だけなのにすぐに汗ばんだとか、そういう余計なことを覚えている。

 

元彼の家に入り浸り始めた時にはすでにその犬はいて、言うなら私の方が後輩入居者。

金魚など意思疎通の図れないものは別として、いわゆるペットと暮らしを共にする生活をしたことがなかったから、最初は正直面倒に感じてた。

きっと向こうも最初はわたしをよそ者と思っていただろうな。

でも、わたしがお風呂に入れてあげたりするようになったら、向こうも「この人この家に来たのか」と思ったのか心を開いてくれるようになり。

ある時一人(と一匹)で家にいる時にガラステーブルの角に足を強打して流血し、声を上げて泣いてたら、心配しているみたいに走って近寄ってきてくれたこともあった。

本当に心配してくれていたと思う。

撫でて撫でて、ねぇ撫でて。と隙あらば手に絡みついてくるような子だった。

一体どんな気持ちで亡くなっていったのか。

 

明日、仕事後にお墓参りに行く予定にしている。

お墓の場所は忘れていたが、昔の自分のツイートを遡りまくって場所を割り当てた。

シェアお墓?なのでその子だけの墓石があるわけではないのだけど、お骨が眠っているお寺に。

主人には素直に話してある。

行きたいんだけど行ってきていい?と聞いたら、最初は(元彼と)待ち合わせしてるの?と聞かれ、そうじゃなくてわたしが行きたいだけ、と。

もちろんいいよ、と言ってもらったから行く。

 

結婚したから改めて都合のいいことをしようとしているんじゃない。

あの子が死んだことには、直接的ではなくともきっと私にも理由があった。

あの子の死から学んでも欲しいけど、でも気付いてもほしい。

これはあなただけが背負っていくことではないことを。